こんにちは、くすだです。
2025年度3月号の『企業と人材』(産労総合研究所)より、ブログでの要約レポを始めました。
企業に属さずフリーで活動している私にとって、こうした専門情報誌で最新のトレンドに触れることは非常に重要だと改めて実感しています。
この機会を「読んで終わり」にせず、学びを整理しながら共有していくために、今後は定期的にブログへまとめていきたいと思います。
前回は、『企業と人材』2025年6月号より、株式会社TKCの人材育成についての記事をまとめました。
今回はちょっと特別版でして、過去の雑誌からの記事紹介です。
『企業と人材』2024年12月号より、「タニモク」に関する記事を取り上げます。
記事タイトル
キャリアオーナーシップをあたり前に!
他人に目標をたててもらうワークショップ「タニモク」プロジェクト
(パーソルキャリア株式会社 ミッション共創推進部 三石原士)
■記事の要約
HRパーソンの有志団体「One HR」が2024年に開催した「HR‘s SDGsアワード」(国連の掲げるSDGsの考え方に着想を得た、HR版のSDGs)において、「違いを力に」部門で最優秀賞を受賞したパーソルキャリアの「タニモク」についての記事です。
1.タニモクとは
- 利害関係のない3人または4人で目標をたて合うワークショップ
- マニュアルや投影資料、台本、ガイドラインなどをホームページで無償提供している
- 最小開催人数は、本人を入れて4人。人数が多い時はグループに分かれる。
- 開催時間は、最短1人30分、4人の場合は4人×30分=2時間
- 参加メンバーに望ましい条件「直接の利害関係がないこと」「参加者全員が新しい目標設定を行いたいと思っていること」「異なるバックグラウンド・観点をもっていること」
2.タニモクのやり方
(1)自分の状況説明(約5分)
- 自己紹介、経歴、仕事・プライベートの状況(モヤモヤしていることや注力していること)などを図や言葉で説明する。
(2)質疑応答(約8分)
- 聞き手は図を見ながら質問する。ただし「今年どうしたい?」系の問いはNG(方向性の誘導回避)。
(3)他の人が本人の「1年の目標」を設定(約5分)
- 本人の情報を聞いた他の人は、「自分だったら」という視点でその人の目標を自由に考え、A4の紙1枚に表現する。
(4)本人へ向けたプレゼンテーション(約12分)
- 「私が◯◯さんだったら、1年の目標はこのように立てます・・・」と説明を行う。その内容に対して本人は自由に質問を行い、「なぜそのような目標にしたのか」といった背景を深掘りしていく(ここがコア部分であり、クライマックス)。
3.タニモク終了後
- 上記①~④のサイクルが全員分完了したら、タニモクは終了。
- タニモク終了後は、個々人で「理想の姿」と「今すぐ」「1カ月後」「半年後」までの行動目標を決める。
- 他者から提案された目標は、すべて受け入れなくてもOK。
- ただし、一見無理なように思えたり抵抗感があったりする提案でも、すぐに否定せず、理由を含め提案者の考えや思いを理解しながら、少しでも実現可能性がないか探っていく。
4.タニモクの効果
- 自分の頭では浮かばないような新たな切り口や考えを得られる。ただし、最終的な目標を決めるのは、あくまでも自分自身。
- 他人の目標を考えることが、逆に自分へのヒントになることもある。
- コーチングセッションと同様の構成になっているので、参加者の本音を引き出し、納得できる目標を設定するとともに、応援し合える環境もつくれる。
- タニモク「モヤモヤについて話す→質問をもらう→客観的かつ肯定的な目標提案→意思決定」。コーチング「聞く→質問→観察→承認→提案→自己決定」。
- 目標管理制度(MBO)支援施策として上司と部下を対象に行った際には、目標設定の工数減や部下の納得度向上、定期1on1の内容などに大きな手応えがあった。
- 管理職にタニモクを体験してもらったところ、メンバー本人が気づいていない強みや状況が分かるようになった。
- 基本的には利害関係のない相手と行うが、仕事上の距離が近い人と実施する場合は、現状に即した具体的な目標設定ができるといったメリットがある。
- 他部門のメンバーと実施する場合は、前提を超えた大胆な選択肢が見つかりやすいことや、社内ネットワークの広がりなどがメリットとしてあげられる。
- タニモクで立てた目標から社内表彰を受けた新入社員も出ている。
- 目標をもとに希望を出して異動を実現した人もいる。
5.タニモクのコツ
- 目標を提案する際には「私が○○さんだったら」という枕詞をつける
- 自分では選ばないものや、実現不可能なものは提案しない
- アドバイスをする場ではない。アドバイスになってしまうと、相手の行動を否定したり、自分の意見を押しつけたりすることにつながりかねない。そうした態度の参加者がいるグループは、明確に満足度が下がる。
- タニモクは正解を当てる場ではなく、あくまで本人の選択肢を広げるための視点を提供する場である。
- 「おせっかい」の推奨。例えば、目標達成のために他部署の人の関わりが必要となった場には、間に入って橋渡しをしてあげるなど。
- 同じメンバーでのタニモクを最低3回実施することを推奨。互いの価値観への理解が深まり、共感が生まれ、より的確な提案ができるようになる。
6.タニモクの広がり
- パーソルキャリア内では、キャリア対話、オンボーディングやイベントなどでのキックオフ、別部門のメンバーや若手同士などで活用
- 企業研修(女性管理職研修やダイバーシティ研修など)の中での実施
- 学校・団体での実施
- アスリートのセカンドキャリア開発にも活用
- 参加者同士がフラットな関係でメンタリングを行う、「タニモク」を活用した「キャリア・メンタリング」
おわりに
今回は、『企業と人材』2024年12月号より、パーソルキャリアの「タニモク」に関する記事をまとめました。
この記事を思い出したきっかけは、お客様とのお打ち合わせでした。
研修や面談の中で目標設定を支援する機会がある私にとって、「タニモク」の考え方や進め方は大変興味深く、今後の活動にも活かせそうだと感じました。
「誰とやるか」「どんな目的でやるか」によって、さまざまな活用の仕方があるのも魅力です。
私自身も、ぜひ一度体験してみたいと思いました。
ところで、私が『企業と人材』を読むきっかけをいただいたのは、私がパートナー講師を務める株式会社ラーンウェルの関根雅泰さんが、2024年度の連載「研修の価値を高める これからの研修評価」を担当されていたからです。
研修評価については現在、研修講師をしながら理論と実践の両輪を回しているところです。
今後も、研修評価に関する記事は積極的に取り上げていきますが、それ以外にも、私自身が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。