『企業と人材』2025年4月号レポ|人的資本経営を支える効果測定の最前線

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こんにちは、くすだです。

2024年度より、『企業と人材』(産労総合研究所)を毎月読める貴重な機会をいただいております。
企業に属さず、フリーで活動している私にとって、こうした専門情報誌で最新のトレンドに触れることは非常に重要だと、改めて実感しています。

この機会を「読んで終わり」にせず、学びを整理しながら共有していくために、今後は定期的にブログへまとめていきたいと思います。
前回は、『企業と人材』2025年4月号より、パーソル総合研究所が実施したOJTに関する定量調査の結果についてまとめました。
今回は、人的資本経営を支える効果測定に関する記事を取り上げます。

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楠田メモ:

■ 記事タイトル
人的資本経営強化のための研修設計と5段階効果測定
(EQパートナーズ株式会社 代表取締役社長 安部哲也)

■ 記事要約
【記事の背景・社会的文脈】
・「人的資本経営」(経済産業省):人財を「費用」ではなく「資本」としてとらえ、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方。
・「人材版伊藤レポート(持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書)」(2020年9月、経済産業省):「人材戦略と経営戦略の紐づけ」が最も重要な課題の一つ。
・「人的資本情報の開示」(ISO30314)(金融庁):東証プライム市場上場企業に対して報告の義務化(2023年)
・人財開発の「投資」的位置づけに向けて、①経営戦略と人財戦略の統合性、②学習から成果・実践への橋渡し、③効果測定とフィードバックの3つの視点が求められる。
・安部さんの会社はROIモデル(5段階測定モデル)を提唱するジャック・フィリップス博士が経営するROI INSTITUTEの日本における唯一のパートナー企業。
・本稿では、「ROIモデル」を軸に、人財開発投資と効果測定の「トレンド」と「手法」について解説。

【人財開発投資の効果測定における世界的潮流】
1.ドナルド・カークパトリック博士の4段階測定モデル

  レベル1:反応(Reaction)
   研修に関する受講者の満足度(研修をどう感じたか)
  レベル2:学習(Learning)
   研修で受講者が何を学んだか(知識やスキルの向上)
  レベル3:行動(Behavior)
   学んだことがビジネスで実践・活用されているか
  レベル4:成果(Results)
   研修が組織の成果にどのように貢献したか

 ●シンプルで実用的。世界中の企業で活用されている。
 ●日本でも普及。人事・人財開発部門で広く知られている。

2.ジャック・フィリップス博士のROIモデル(5段階測定モデル)

  レベル1:反応(Reaction)
  レベル2:学習(Learning)
  レベル3: 適用と実践(Application and Implementation)
  レベル4:ビジネスへの影響(Impact)
  レベル5: 投資対効果(ROI:Return On Investment)
   人財開発プログラムのコストと経済的なリターンを数値化し、投資対効果を算出する
 
  ●人財開発投資の成果を数値化し、経営判断に活かせる形で提示可能。
  ●世界最大の人財開発大会「ATD」などでも新しい手法や事例を積極的に発表。
  ●現在、新たに追加されている手法
    ・ビジネスへの研修の影響とそれ以外の要素(上司のサポート他)による影響の分離
    ・研修に関する総コストの算出
    ・研修の効果を数値化(金額ベースにする)

【人財開発のプログラム設計と効果測定のアラインメントモデル(Vモデル)】
・レベル5からレベル1までを「逆順に設計」、実施後に「正順に測定」する。
・ジャック・フィリップス博士「常にWHYからはじめよ!」
・人財開発プログラム実施後に効果測定をはじめるのではなく、事前に「どのレベルの効果まで求め、なぜ、何を、誰に、いつ、どのように行うか?」を戦略的に設計することが重要。

 ●プログラム実施前
  レベル5:ROI目標を設定
  レベル4:ビジネスへの影響を定義
  レベル3:行動変容の具体化
  レベル2:必要な学習内容の明確化
  レベル1:満足度や講師に対する評価の目標基準設定

 ●プログラム実施後
  レベル1・2:アンケートや理解度テスト
  レベル3:実施後3〜12か月後にアンケートやインタビュー
  レベル4:未受講者との前後比較、売上・利益の推移比較など
  レベル5:成果の金額化とコスト比較によるROI算出

【効果測定を行うべき研修の選定】
・効果測定には時間と費用がかかる。
・ジャック・フィリップス博士は、「すべての人財開発プログラムについて、レベル3・4・5を測定する必要はない」としている。

  [測定レベル] [推奨レベル]
   レベル1     90〜100%
   レベル2     60〜90%
   レベル3     30〜40%
   レベル4     10〜20%
   レベル5     5〜10%

 ●上位レベルの効果測定の選定基準
  ・社内的に重要な人財開発プログラムである
  ・経営陣や投資家などの注目度が高い人財開発プログラムである
  ・大きな予算をかけている人財開発プログラムである

【アラインメントモデル(Vモデル)のメリット】
 経営者:人財開発投資の効果を可視化し、戦略的な意思決定を可能に 
 株主:人的資本経営の質を把握可能
 人事:プログラムの目的・効果を明確化し、PDCAを回せる
 受講者:研修の意義や自分の成長とのつながりが実感しやすくなる

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今回は、『企業と人材』2025年4月号より、人的資本経営を支える効果測定に関する記事についてまとめました。
記事では、アラインメントモデルの考え方だけでなく、研修実施前後にどのような準備や測定が必要か、数値化の具体例とともに紹介されており、実践のイメージがとても湧きやすい内容でした。

『企業と人材』では、私がパートナー講師を務めている株式会社ラーンウェルの関根雅泰さんが、2024年度に研修評価に関する連載を担当されていました。
関根さんからは、「リエさんが好きそうな内容だから」と、研修でお会いするたびに「おみやげ」として最新号をいただいておりました。
(関根さん、貴重な専門雑誌の「おみやげ」感謝です!!)

今後も、私自身が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。

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楠田 理恵くすだ りえ

リフェクション 代表

埼玉県生まれ。
明治大学法学部卒。大学卒業後、専門商社で16年間事務職に従事。最初の10年は、総務部にて人事、労務、採用、育成、庶務等、幅広く担当。この頃、「社員の相談窓口的な存在」「新入社員のフォロー役」という立ち位置を確立していった。
出産・育休を経て復帰後は、短時間勤務で働くいわゆる「時短ワーママ」を経験。また、2人目の育休から復帰後は、働きながら心理学を学び直し、キャリアコンサルタント(国家資格)を取得。

その後、子供2人の成長に合わせた「働き方改革」を段階的に進め、2021年に起業。
現在は、フリーランスのキャリアコンサルタントとして、企業研修、若手社員の1on1面談を行っている。研修後や面談後の細やかなフォローが強み。特に若手社員の「お母さん的存在」として、精神面のフォロー役を担っている。
家族:夫、長女、長男

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