こんにちは、くすだです。
2025年度3月号の『企業と人材』(産労総合研究所)より、ブログでの要約レポを始めました。
企業に属さずフリーで活動している私にとって、こうした専門情報誌で最新のトレンドに触れることは非常に重要だと改めて実感しています。
この機会を「読んで終わり」にせず、学びを整理しながら共有していくために、今後は定期的にブログへまとめていきたいと思います。
前回は『企業と人材』2024年7月号より、経験学習研究の第一人者である松尾睦先生のインタビュー記事をまとめました。
今回は『企業と人材』2025年7月号より、AI時代の仕事とキャリアの変化に関する記事を取り上げます。
記事タイトル
AI時代に変わる仕事・組織・働き方
(エクサウィザーズはたらくAI&DX研究所 所長 石原直子)
■記事の要約
1.生成AIの登場と進化
- 2022年登場のOpenAIによるChatGPTによって「生成AI」というカテゴリが広まった。
- GoogleのGemini、AnthropicのClaude、MetaのLiaMA、日本のELYZAなど。
- 以前はAIを動かすプログラミング言語やアルゴリズムを理解していることが必須だったが、生成AIの登場によって「AIを扱える人」の数が一気に増え、AIは誰にでも使える開かれたツールになりつつある。
- 2024年後半、「マルチモーダルモデル」の生成AI(入力や出力においてテキストだけでなく画像や音声も扱える)を各社が発表。これにより、画像を読み取り内容を説明する、音声で即時のやりとり、図表の生成も可能に。
- 2025年からは「AIエージェント」という概念が登場。いわば「業務遂行力をもつAI」。AIは単なる道具を超えて「知的なパートナー」になりつつある。
- ただし、生成AIの恩恵を正しく受け取るためには、設計力と操作力が必要。
- 現段階では生成AIが作り出したものの正誤や真偽を確認する作業も不可欠。
2.AIが変える仕事の現場
(1)デスクワーカーの最適なパートナー
- 「書く」「まとめる」「伝える」「構想する」などの作業に強みをもつ生成AIは、デスクワーカーの最適なパートナーになり得る。
- 議事録作成、会議資料のたたき台作成、メール文の下書きなど。
- より「前線の業務」でもAIの活用が可能になっている。
- 営業:提案書作成、過去の取引状況や商談の推移を踏まえた新たな提案、競合分析。
- 人事:過去の採用実績を踏まえた求人票や面接質問案の作成、組織内サーベイの分析やフリーコメントの要約。
- エンジニア:コード作成、バグの原因特定と修正。
- より創造的なタスク:壁打ちやラフ案作成でAIを活用し、人間はその後の試行錯誤に時間をかけることが可能になる。
- 「作業」の部分をAIに託す。また、「創造」の部分でサポートを得る。
(2)「AIに最適化」した業務プロセス
- 今存在する業務プロセスは、「多くの人にとって、この手順で仕事を進めるのが最適かつ最善である」という私たちの長年の経験値をセオリー化したもの。つまり「人間に最適化」されている。
- そのプロセスを前提に、「ここをAIに代替してもらおう」と抜き出している。
- 今後は「人に最適化」していた業務プロセス自体をいったん手放し、「AIに最適化」した業務プロセスを一からAIに構築してもらうことが可能になる。
- 人間の役割は、AIの苦手な部分を補ったりフォローしたりすることになる。
- 「人間の仕事がAIに奪われる」と不安を感じる人もいると思うが、人口減少が続く日本では、AIに任せられることはAIに任せて、人は人にしかできないことをするという考え方が重要。
- AIとの共創を前提とした業務プロセスの再構築は、大企業よりも中堅・中小企業の方が速く進む可能性がある。
3.キャリア形成の構造転換
(1)「選択と適応の連続」によるキャリアへ
- これまでのキャリア形成の標準形は、「経験の蓄積による熟練」だった。
- 例えば営業であれば、数年かけて商談の流れや業界知識を頭に入れ、顧客に揉まれながら人間関係の構築スキルを高めていく、というようなもの。
- AIの活用によって、これからのキャリア形成は、知っていること、できることが徐々に増えるという形ではなく、「高速で大量の試行錯誤による変化適応の連鎖」へと変わっていく。
(2)キャリアプロセスの変化と個別化
- これまでのような多くの人がたどる「標準的な成長段階」も徐々になくなっていく。
- 垂直的に組織内ヒエラルキーの階段を上るという固定的なキャリアマップも描きづらくなる。
- これからは、適所に適材を配置し、しかもそれが頻繁に改変されたり、プロジェクト単位で仕事を行ったりすることが増えてくる。
- これらの変化を通じて、キャリアの個別化も進む。
- 「目の前の仕事を手順通りにこなして管理職になっていく」というキャリアプロセスが消滅していく。
- 「自分の好きなことや得意なことを武器にして、他の人とは違う存在になる」ことが求められる。
- 「やりたいことに専念するために、やりたくないことをAIにやってもらう機械操縦力」が大事になってくる。
- AIの活用によって、同じタイプの仕事をたくさんの人で分業する状況が減っていく。
(3)AI時代に必要なスキル
- 顧客や職場を観察して、従来のやり方に疑問を持つ力。
- 観察の結果として、自ら仮説を立てる力。
- 仮説の検証にAIなどを使いこなす力。
- AIが示す複数の解決策から一つを選び取る力。
- 結果を素早く見定め、折れずに何度でも試行錯誤する力。
- 一度成功した手法に固執せず、新しい解を模索し続ける力。
- 倫理観や他者を尊重する姿勢。
4.変わるマネージャーの役割
- 従来の、業務の進捗を逐一管理し、現況を上層部に伝える仕事や、上層部からの指示や命令をメンバーに伝える仕事は激減する。
- ジョブ・アサインメント(組織目標達成のために、マネージャーや上司が部下に適切で効果的な仕事を割り振ること)の力がこれまで以上に重要になる。
- マネージャーの役割が変わることで求められる資質も変わっていく。
- チーム内の業務を熟知していることや管理する力はあまり重視されなくなる。
- 人の可能性を引き出す力や、信頼をベースに人を巻き込む力が重視されるようになる。
- 自身が現場で動き、直接的に価値創造していくのが得意な人は、マネージャーではなく、ハイレベルなプレイヤーとしてAIと協働しながら価値創出を続けていくキャリアの方が合っている。
5.変わる経営陣の役割
- AIで知識や価値創出力を高めた個人に「それでもこの会社で働き続けたい」と思ってもらうためには、ぶれない目的(パーパスやビジョン)を描き、伝え、共感を得ていくことが重要になる。
- 「人の能力や労働力」「AIを活用して拡張された人の能力」「AIが生み出す価値創出力」の3つに投資する。
- Do More with Less(もっと多くのことをもっと少ない人でやる)。労働力減少は避けて通れない。
- AIを駆使して、今より少ない人数で今以上のことをやるにはどうすればいいのかを考える。
- 「この仕事はAIや機械には置き換えられない」という固定観念を捨ててみる。
6.変わる人事の役割
- 同じことを同じようにできる人の大量採用ではなく、唯一無二のプロフェッショナルを迎え入れ、「一人ひとりのポテンシャルを最大に活かす=パーソナライゼーション」へと向かう(パーソナライズドHR)。
- AIにやらせることと人がやることを明確にしたうえで、どこにどんなAIと人材を配置するかを決めていく(デジタル労働資本のポートフォリオ)。
- AIと人間がストレスなく最大に力を発揮できる職場環境、クラウド環境、コミュニケーションプラットフォームを構築する。
- 連続する変化を前提にした柔軟なチーム組成と解散の繰り返しによる新たな価値創造が主流になるため、人員の再配置も頻繁になる。人事にはスピード感をもった組織組成能力が求められる。
- マネージャーや次世代経営者の選抜基準をデザインするのも人事の役割。
おわりに
今回は、『企業と人材』2025年7月号より、AI時代の仕事とキャリアの変化に関する記事をまとめました。
AIの導入と活用によって仕事の進め方が変わるとするならば、キャリアの積み重ね方も変わってくることが示唆されています。
AIの活用方法だけでなく、「AIと共に働く人をどう育てるか」という観点をもちながら、組織づくり・人材開発を進めていく必要があることに気づかされました。
ところで、私が『企業と人材』を読むきっかけをいただいたのは、私がパートナー講師を務める株式会社ラーンウェルの関根雅泰さんが、2024年度の連載「研修の価値を高める これからの研修評価」を担当されていたからです。
研修評価については現在、研修講師をしながら理論と実践の両輪を回しているところです。
今後も、研修評価に関する記事は積極的に取り上げていきますが、それ以外にも、私自身が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。