こんにちは、くすだです。
2025年度3月号の『企業と人材』(産労総合研究所)より、ブログでの要約レポを始めました。
企業に属さずフリーで活動している私にとって、こうした専門情報誌で最新のトレンドに触れることは非常に重要だと改めて実感しています。
この機会を「読んで終わり」にせず、学びを整理しながら共有していくために、今後は定期的にブログへまとめていきたいと思います。
前回は『企業と人材』2025年8月号より、Forbes JAPANのWeb編集長 谷本さんのインタビュー記事をまとめました。
今回は『企業と人材』2025年8月号より、社内コミュニケーション施策に関する記事を取り上げます。
記事タイトル
「社内コミュニケーション施策」はなぜ従業員に響かないのか?
(三井不動産ビルマネジメント ビジネスソリューション事業推進本部
シニアコンサルタント 大矢耀介)
■記事の概要
コミュニケーション施策がうまくいっている企業は、大矢さんの体感では1割未満。9割の企業がうまくいかずに悩みを抱えている。「目的設定の解像度の低さ」が原因。解像度が低い状態のまま打ち手の検討が進むと、たいてい「ランチ会」「運動会」「社内SNS」に帰結する。「やり方」以前に、「そもそも何のためにやるのか?」という目的の解像度を高める必要がある。
■記事の要約
1.コミュニケーション活性化に取り組む企業が増えている背景
- 「飲みニケーション」や「タバコ部屋」が機能しなくなった
- リモートワークの浸透
- 根本には2つの要因:①ビジネススピードの加速、②人材の流動性の高まり
①ビジネススピードが加速すればするほど、組織には素早い意思決定が求められる。上層部の指示を待たずに、また、部門ごとに業務を閉じずに、現場レベルでの協働や立場を越えた対話、自律的な意思決定が必要不可欠。
②従来は「新卒一括採用・終身雇用・年功序列」のもと従業員同士の関係性は明確で、他部署含めお互いによく知った関係性のなかで阿吽の呼吸で動くことができた。現在は転職・中途採用が当たり前となり、従業員間の関係性は日々リセットされる環境になっている。
2.コミュニケーション施策の課題
- 従業員がなかなか関心を示してくれない
- 回を重ねるごとに参加者が減少している
- 毎回同じ顔ぶれ
- その場は盛り上がるものの、その後の仕事につながらない
3.コミュニケーション施策の「落とし穴」
- 「落とし穴」=「目的設定の解像度の低さ」
- 「社内コミュニケーションは大事か?」という問いには多くの人がYESと回答するが、「本当に必要なのか?」「何のために必要なのか?」といったことは十分に吟味されない。
- 目的や課題設定が曖昧なまま(=解像度が低い状態のまま)、課題解決に向けた打ち手の検討が進んでしまう。
- 打ち手の検討会議は、「社内コミュニケーション」という言葉の連想ゲーム会に様変わりする。「ランチ会をやろう!」「令和版運動会をやろう!」「社内SNSで情報共有しよう!」といった具合。
- 従業員は会社の制度や施策をシビアに判断している。
- 参加することによる明確なメリットの有無を鋭く感じ取っている。
4.「落とし穴」にハマっているかどうかをチェックする3つの問い
- あなたの企業が目指す「コミュニケーションが活性化されている状態」とは、具体的にどのような状態ですか?
- あなたの企業が目指す「コミュニケーションが活性化されている状態」に対して、現在はどのような状態ですか?
- 目指す状態を実現できたとすると、自社のビジネスや顧客にどのような影響をもたらしますか?
5.「解像度の低い目的設定」と「解像度の高い目的設定」の違い
- 大矢さんが過去に支援した企業のBeforeとAfter(下記)。
- 目的(Why)
【Before】コミュニケーションを活性化し、イノベーション風土を創出する
【After】開発部と営業部の壁を壊し、顧客起点でサービス開発を推進する風土へ - コンテンツ(What)
【Before】趣味会、ランチ会、日本酒飲み比べなど
【After】開発部×営業部による顧客勉強会、ユーザーへのインタビューセッションなど - 「1年以内にイベントに1度以上参加した従業員の割合」はBeforeの4倍近くに。
- 現場の管理職が部下に対して各種施策への参加の声がけをしてくれたことも大きい。
- 目的設定の解像度を高めたことで、事業や現場の課題とコミュニケーション施策の内容がマッチし、多くの社員を巻き込むことができた。
6.目的設定の解像度を高めるための3つの問い
- あなたの会社・組織では、今、「コミュニケーション」や「従業員同士の関係性」について、どのようなことが起きていますか?
【回答例】事業部門の間に壁があり、情報連携や協働ができていない。 - その問題は、特に、誰と誰(どこの部署と部署)の間で、いつ、どのようなシチュエーションで起きていることでしょうか?具体的なエピソードとともに教えてください。
【回答例】事業部門ごとに顧客を抱えており、それぞれ営業活動を行っているが、顧客ニーズに合わせて他事業部門の製品を提案するなどの柔軟な対応がとれていない。 - その問題を放置し続けると、自社のビジネスや事業にどのような影響をもたらしますか?
【回答例】これにより、営業機会の損失が生まれている。
7.3つの問いに対する回答を考える時のポイント
- 打ち手のことはいったん忘れる
- 問いに対する答えを愚直に具体化する
- 基本的に、現場管理職の関心事は「自部門のビジネスや事業」にあり、従業員の関心事は「目の前のタスク」にあるので、それらとの紐づけを明確にする
おわりに
今回は、『企業と人材』2025年8月号より、社内コミュニケーション施策に関する記事をまとめました。
中でも、下記の大矢さんの指摘にはハッとさせられます。
>「社内コミュニケーションは大事か?」という問いには多くの人がYESと回答するが、「本当に必要なのか?」「何のために必要なのか?」といったことは十分に吟味されない。
そもそも「社内コミュニケーション」って、何でしょうね。
まずはそこのところから、社内で十分に話し合われることに意義がありそうです。
ところで、私が『企業と人材』を読むきっかけをいただいたのは、私がパートナー講師を務める株式会社ラーンウェルの関根雅泰さんが、2024年度の連載「研修の価値を高める これからの研修評価」を担当されていたからです。
研修評価については現在、研修講師をしながら理論と実践の両輪を回しているところです。
今後も、研修評価に関する記事は積極的に取り上げていきますが、それ以外にも、私自身が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。
