こんにちは、くすだです。
2025年度3月号の『企業と人材』(産労総合研究所)より、ブログでの要約レポを始めました。
企業に属さずフリーで活動している私にとって、こうした専門情報誌で最新のトレンドに触れることは非常に重要だと改めて実感しています。
この機会を「読んで終わり」にせず、学びを整理しながら共有していくために、今後は定期的にブログへまとめていきたいと思います。
前回は、『企業と人材』2025年5月号より、アンケートから見る「2025年3月卒業予定者の採用・就職」についての記事をまとめました。
今回は、金井重要工業株式会社の「採用活動しない採用活動」に関する記事を取り上げます。
記事タイトル
会社・学生がともに成長できる採用に向けて「採用活動しない採用活動」を実施
(金井重要工業株式会社 代表取締役副社長 金井宏輔)
■記事の要約
1.金井重要工業株式会社の概要
- 本社:大阪府大阪市
- 創業:1894年3月(2024年に創業130周年)
- 従業員数:236人(2024年3月31日現在)
- 売上高:53億円(2024年3月31日現在)
- 事業内容:繊維機器製造・販売(タイヤコード、グラスファイバー、カーボンファイバーなど)、不織布製造・販売(スポンジたわし、自動車の天井材など)、医療機器の開発・製造(2014年に技術革新室を発足し、産官学・医工連携による研究推進)、不動産の賃貸など
- インタビュイー:金井宏輔さん、創業家で現会長の金井宏美氏の長男、大学卒業後は東京の商社に勤務、2013年に金井重要工業に入社、2014年から採用担当、現副社長(現社長は叔父にあたる)
2.「組織風土」「社員の働き方」に対する課題感
- 「保守傾向」と「同質性の高さ」
- 採用では国公立大学の理系学生や大学院卒など優秀な人材を獲得できていたが、真面目にコツコツ仕事をするのが得意なタイプが社内に多くなっていた
- これからの不確実な時代にはイノベーションを生む「尖った人材」も必要
3.採用変革「採用活動しない採用活動」
- 大手就活ナビへの情報掲載のとりやめ(今の社内にはいない人材を採用するためには、まずは採用の入口を変える必要がある)
- マーケティング的な手法を活用(「今いる人材の対極にいる人材」を言語化。そのような学生がどんな就職活動をするのかを考え、彼らに直接アプローチする方法を考えていく)
- 「悪口を言う会社説明会」の実施(残業時間や社員の傾向、社内設備など、入社1年目で感じる不安や疑問、不満などを伝えた上で、将来に向けた事業計画を述べ、一緒に会社を成長に導いてくれる仲間を求めていることを伝える)
- エントリーシートの提出を求めない(つくられた言葉しか返ってこないと考えたため)
- 志望動機を求めない(志望度は聞くものではなく、上げていくのが採用担当の仕事)
- 逆求人サイトでこちらから学生に直接オファーする(一斉アプローチではなく、一人ひとりのプロフィールを確認しながら、その人向けたオファー文を作成・送付)
- リアルワーク選考(模擬シチュエーションで仕事のできる度合いを測る)
- UR選考(動画を制作・提出してもらい、社内サイトで公開。採用を社内全体で行う)
- オンライン飲み会「Dlink(Drink+Link)」(学生3~4人と金井さんがざっくばらんに話す会で、合否には影響しない。アルコール必須ではない)
- 学生による社員へのインタビュー(内容について採用担当は関与しない)
- 選考後半での人事面談では「本当に金井重要工業でよいのか」を問いかける
- 最終プレゼン(役員の前で「自分について」発表する)
4.学生向けのイベントの実施
- 「ストップマニュアル就活」(就職活動のマニュアル化・画一化に警鐘を鳴らす)
- 「やりたいことが見つからないあなたへ」(学生のキャリア相談に向き合う)
- 「人事の本音」(採用側である人事の思いを伝える)
- 金井さんと小谷真理氏(元お笑い芸人でホームレス)との対談
- 「圧迫面接セミナー」(他社と合同で、学生と合意の上で圧迫面接を体験してもらう)
- 「人事が就活!」(学生が人事担当者を面接する)
- 自社採用サイト「採用ROADMAP」(初代社長が就活を支援する)
- 「ミスを学びに変えるYARAKASITER(やらかしたー)」(社員の失敗談を掲載)
5.内定決定・承諾後と入社後
- 懇親会の開催
- 社内ポータルサイトのアカウント付与(会社のニュースや経営層のメッセージを伝える)
- 配属先は採用担当が決定し、内定段階で学生に伝えている
- 入社1年目の夏季に、約1週間のインターンシップの補佐役を担当してもらう(これによる育成効果は大きく、新人教育の欠かせない仕組みの一つになっている)
おわりに
今回は、『企業と人材』2025年5月号より、金井重要工業株式会社の「採用活動しない採用活動」に関する記事をまとめました。
ドラマ『人事の人見』を地で行くような面白い取り組みをしている会社でした(しかも、10年以上前から!)。
「BtoBのニッチな製造業である金井重要工業に入りたいという学生は、常識的に考えていない」(金井さん)と割り切って、大手企業が実施している一般的な選考プロセスをやめて独自の方法を採用している点は、「BtoB企業」や「中小企業」にとって参考になりそうです。
採用CX(候補者体験)が注目されていますが、今回取り上げた金井重要工業の取り組みも、学生への価値提供を重視している点で当てはまります。
インタビュイー金井さんの言葉を追記します。
- 学生と真剣に向き合っていけば、志望度は上がっていく
- 志望度は聞くものではなく、上げていくのが採用担当の仕事
- 「入口はワクワク、出口は気づき・学び」になるように
- 熱いフィードバックを通して学生が成長できる選考プロセスの構築を目指している
人材育成の視点で印象的だったのは、「1年目の夏季に、インターンシップの補佐役を担当」という取り組みです。ここで「メンター役になる」「教える」という体験をすることが大きな育成効果を生むとのことでした。参考になります。
ところで、私が『企業と人材』を読むきっかけをいただいたのは、私がパートナー講師を務める株式会社ラーンウェルの関根雅泰さんが、2024年度の連載「研修の価値を高める これからの研修評価」を担当されていたからです。
研修評価については現在、研修講師をしながら理論と実践の両輪を回しているところです。
今後も、研修評価に関する記事は積極的に取り上げていきますが、それ以外にも、私自身が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。