こんにちは、くすだです。
2025年度3月号の『企業と人材』(産労総合研究所)より、ブログでの要約レポを始めました。
企業に属さずフリーで活動している私にとって、こうした専門情報誌で最新のトレンドに触れることは非常に重要だと改めて実感しています。
この機会を「読んで終わり」にせず、学びを整理しながら共有していくために、今後は定期的にブログへまとめていきたいと思います。
前回は『企業と人材』2025年11月号より、ネガティブフィードバックにおける「ギャップの捉え方」についてまとめました。
今回は『企業と人材』2025年11月号より、地域コミュニティによる学びと共創の取り組みに関する記事を取り上げます。
記事タイトル
地域コミュニティによる新たな学びのデザイン
地域×学び×共創文化の創造―静岡県浜松市「ハマエツ」の取組み
■記事の概要
「越境学習」をテーマにコミュニティ活動を続けている静岡県浜松市の「ハマエツ」の紹介。中心メンバーは、株式会社NOKIDO代表取締役 小川健三氏、あまねキャリア株式会社 代表取締役 沢渡あまね氏。
1.静岡県浜松市について
- 日本列島のほぼ中心に位置する
- 戦国時代に徳川家康が拠点とした浜松城の城下町、江戸時代には東海道の宿場町として栄えてきた。
- 浜松市をはじめとする遠州地域(静岡県西部地域)は古くから「ものづくり」が盛んな街として知られており、技術者・職人の層が厚い。
- 楽器産業ではヤマハ、河合楽器製作所、オートバイ産業では本田技研工業、スズキ、ヤマハ発動機など。
- 遠州っ子の気質「やらまいか精神」=「まずはやってみよう」「まずは挑戦してみよう」
- 人口約78万人を擁する政令指定都市・浜松市も、人口減少による地域共同体の維持や、グローバル化を受けての新産業の創出が課題。
2.「ハマエツ」の中心メンバーの二人について
- 小川健三氏:東京で就職後、浜松市に戻ってNOKIDOを創業。IT・WEB支援から後に女性活躍、働き方や人材育成支援の会社へと転換。Uターン当初に抱いた、地元企業の働き方やマネジメントのあり方、学びに対する姿勢への違和感や戸惑いがあったから。「労働=大変なこと」と捉えて、何も変えようとしない状況に違和感。
- 沢渡あまね氏:仕事で浜松を訪れ、この土地と企業・人に魅力を感じ、2020年に浜松に拠点を移した。「やらまいか精神」にいわれる、新しいことに挑戦する文化、外のものや人を受け入れる文化が根付いているところに可能性を感じたから。
- お二人が出会ったのは、NOKIDOが企画した「テレワーク・デイズ2019」。
3.ハマエツの活動①「経営者勉強会」
- 3~4ヶ月に1回、浜松近辺に拠点を置く中堅・中小企業の経営者が集まり、課題図書の内容をテーマに経営について話し合う。
- 参加メンバーは、地元金融機関、メッキ業の3代目、石油業の6代目などさまざま。
- これまでの課題図書:『THE MODEL』(翔泳社)、『最高の結果を引き出す質問力』(河出書房新社)など。
4.ハマエツの活動②「次世代リーダー育成プログラム」
- 「経営者勉強会」で実施した1泊2日の合宿研修で、参加者からあがった若手・中堅層に対する課題感をきっかけに、2023年から始めた。
- 若手が横でつながり、学び合える場。
- 浜松市は製造業を中心とした大企業とその協力会社が多いこともあり、他業種・職種や外からくる人と交流する場が少ない。中長期視点で投資を考える意識も全体的に弱い。
- 毎年、5・10月の2クール(1クール約5ヶ月)で実施。
- ある中小企業では、社員の3分の1以上が本プログラムを受講している。
- 隔週、1回あたり3時間の対話型プログラム。
- 「問いのデザイン」「役割マネジメント」「ヘルプシーキング」などについて学ぶ。
- 各講座の間に自社での実践と内省。
- 他の参加者との対話を通して、5~10年後の企業のあり方や地域での働き方を考える。
- ここから派生して、「水曜日のヨル喫茶」(水ヨル)、1冊の本について金曜日の夜に語り合う「金ガレ」など、さまざまなコミュニティが自然発生的に誕生している。
5.ハマエツが目指しているもの①新たな「共創文化の創造」
- 沢渡さんが東北工業大学の下總良則准教授とともに必要な要素とケイパビリティ(能力)を「共創デザイン」としてまとめている。
- 9つの要素:ビジョンのデザイン、動機のデザイン、ストーリーのデザインなど9つ
- 35のケイパビリティ:ビジョニング、ブランディング、リーダーシップなど35個
- 9つの要素と35のケイパビリティは、一人ですべてを獲得する必要はない。
- 共創においては、役割分担や、苦手なことを得意な人に任せたり、できそうな人を探してつながっていくことが大事。
6.ハマエツが目指しているもの②「学習デザイン」と「コミュニティデザイン」の融合
- 「学習」と「コミュニティ」を近づけていくことが、自分たちらしいデザインの創造につながると考えている。
- 「学習」と「コミュニティ」は近しいものと考え、その2つを合わせた企画がハマエツの活動。
7.ハマエツから見えてくるコミュニティ活動のヒント(5つ)
- 「違和感」を大切にする
- 「発信」と「場づくり」
- 「経済合理性」と「合意形成」
- 「人」から「企業」へ
- みんなでつくる
(1)「違和感」を大切にする
- 自分が住んで働いている場所に対してモヤモヤを感じるのは悪いことではない。
- 大事なのはそのモヤモヤに名前を付けて、どうしたらいいかを話し合うなど、モヤモヤを新たな共創や文化創造につなげていくこと。
- 違和感を次へとつなげていくために、「その土地を好き過ぎない」視点は大切。
- その地域に対する熱量が高すぎる人ばかりだと、不都合な面を見ないふりをしたり、指摘した人を攻撃したりするなど、その思いがマイナスに働くことが往々にしてある。
(2)「発信」と「場づくり」
- コミュニティ活動で課題となるのが、時が経つと先細りになってしまう、慣れ合いになってしまうこと。
- そうならないためには、「発信」と「場づくり」が大切。
- 自身が感じた「モヤモヤ」を発信していくことで、同じ「モヤモヤ」を抱えている人と出会える。
- 発信して、仲間が集まり、コミュニティが動き出したとき、「場」が必要となる。思いがあっても集まる「場」がなければ活動は続いていかない。
- ハマエツの場合、地元で不動産業を営む株式会社スズヒロの古橋啓稔さんの存在が大きかった。企業研修や学校行事などで活用されている「365BASE outdoor hostel」が「場」になっている。
- 「365BASE」は2025年10月から、「人事図書館」(東京都中央区)の浜松分館として活動の幅を広げている。
(3)「経済合理性」と「合意形成」
- ハマエツは、国や県からの補助金に頼っていないことも関係し、一定の経済合理性は必要だと認識している。
- 次世代リーダー育成プログラム受などは、地元の参加企業が講料を払って社員を派遣。
- 地域で学ぶこと=投資であるという認識がベースにある。
- 投資に対してお金や時間、人脈といった経済(利益)がコミュニティを通して回っていくことを企業に証明できなければ、継続的な支援は得られない。
- 文化創造と経済創造は両輪。社員や地域の学びに投資していくことで、新たなビジネスやつながりが生まれてくる。
- 小さなことからでもいいので、学びに時間やお金をかけていくことは大事である。
- 地域内で学びを活性化していかなくてはいけない、そのためには投資が必要だということを、最初にしっかりと合意形成し、それを繰り返しながらマーケットをつくっていくことが地域活動には求められる。
(4)「人」から「企業」へ
- 地域での活動を継続性のあるものとしていくためには、企業や行政を巻き込むことも大切。
- はじめから企業に視点をあてるのではなく、同じ思いを持つ個人とつながっていくことで、いずれは企業とつながっていく。
- 「思いのある個人」がコミュニティに参加してくれると、いずれ企業や行政も巻き込めるようになる。
- 企業に働きかけるなかで、「学び」「学習」はよいテーマになる。
- 学びは「共創」を生みやすいテーマ。学びは地域・世代・組織を超えるものであり、多くの人が学ぶことの大切さを理解しているため、そこを支援してもらうことに対して合意形成が得やすい。
(5)みんなでつくる
- 何事も一人でやり過ぎないことが大切。
- 中心人物のキャラが強すぎると、その人に任せきりになったり、その人が主導権を握ってしまうようになり、結果的にその人がいないと活動が回らなくなる。
- 中心人物の好き嫌いがコミュニティメンバーや活動に影響するのもよくない。
- 立ち上げ時はリーダーがいてもいいが、活動を続けるなかで、どこかでリーダーが権限を手放したり、他の人に任せたり、役割分担するなど、変化していくことが大切。
- ハマエツの意義=共創コミュニティなので、誰かが上に立つ、教えるという関係性はとらない。
おわりに
今回は、『企業と人材』2025年11月号より、地域コミュニティによる学びと共創の取り組みについてまとめました。
ハマエツの事例から印象的だったのは、「違和感」からすべてが始まっている点です。
地元に対するモヤモヤや課題意識を起点に、それを言語化し、発信し、場をつくり、人を巻き込んでいく。その積み重ねが、結果として新しい文化や学びの仕組みを生み出しているのだと感じました。
また、「学び」と「コミュニティ」を切り離さずに捉えている点も大きな示唆でした。
企業の中だけで完結する育成ではなく、外とつながりながら学ぶこと。
その中でこそ、これからのリーダーに必要な視点や関係性が育まれていくのかもしれません。
明日からの実践としては、
- 自分の中にある「違和感」に目を向けてみる
- それを言語化し、小さく発信してみる
- 安心して対話できる「場」を意識的につくる
こうした一歩が、学びを「個人のもの」から「共創のもの」へと広げていくきっかけになると感じました。
ところで、私が『企業と人材』を読むきっかけをいただいたのは、私がパートナー講師を務める株式会社ラーンウェルの関根雅泰さんが、2024年度の連載「研修の価値を高める これからの研修評価」を担当されていたからです。
研修評価については現在、研修講師をしながら理論と実践の両輪を回しているところです。
今後も、研修評価に関する記事は積極的に取り上げていきますが、それ以外にも、私自身が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。
