こんにちは、くすだです。
2025年度3月号の『企業と人材』(産労総合研究所)より、ブログでの要約レポを始めました。
企業に属さずフリーで活動している私にとって、こうした専門情報誌で最新のトレンドに触れることは非常に重要だと改めて実感しています。
この機会を「読んで終わり」にせず、学びを整理しながら共有していくために、今後は定期的にブログへまとめていきたいと思います。
前回は『企業と人材』2025年8月号より、社内コミュニケーション施策に関する記事をまとめました。
今回は『企業と人材』2025年8月号より、HTM(ハイパー・チームマネジメント)を導入している、ビジネスエンジニアリング株式会社の取り組みを取り上げます。
※HTMとは、株式会社Hyper-collaborationが提供している「アジャイル型のチームマネジメントで自律的なチーム活動を実現する」プログラムです。
記事タイトル
「ハイパー・チームマネジメントで組織変革を推進」
(ビジネスエンジニアリング ソリューション事業本部 副事業本部長 宮澤由美子 他)
■記事の概要
マネージャーが一つ下のレベルの業務を行っていることが課題としてあり、「マネージャーの権限移譲」を目的として、HTM(ハイパー・チームマネジメント)を導入。一度は導入に失敗して再スタートした経緯も語られていて参考になる。「EQリフレクションシート」の活用も興味深い。
■記事の要約
1.組織の特徴・課題
- マトリクス型組織:部門に所属しながらプロジェクトに参画する。
- この体制のもとでは、プロジェクトをスケジュールどおりに遂行することと、そのために必要なスキル・知識を向上させることが重視されていた。
- 一方で、各プロジェクトの全体像に対する理解や意義、マインド、将来のキャリアに対する意識などは後回しになっていた。
- そのプロジェクトにアサインされたことで何を学んだのか、どう成長したのか、それが次のビジネスにどうつながるのかというストーリーを描けず、案件ごとに細切れになっていた。
- 若手社員を中心に、成長や挑戦に対する意欲の低下がみられていた。エンゲージメント調査の結果でも、成長や挑戦に関するスコアが低くなっていた。
2.HTM導入の目的
- ソリューション事業本部としての求めるケイパビリティを、「人やチームの関係性」と設定した。
- その実現の方法をHTMの導入とした。
- HTMのスタートにあたり、まずは階層ごとの課題を洗い出した。
- マネージャーは、一つ下のレベルの業務を行っていて、未来を語り、行動する時間が少なく、組織育成に向けたアクションをスタートできていない。
- リーダーは、リーダーシップを発揮できておらず、自律的な仕事の組み立てができていない。
- メンバーは、横連携のコミュニケーションがうまくとれず、遠慮がち。
- リーマン・ショック時の採用抑制により、30代後半~40代前半層が手薄になっている。
- 本来この世代が担うべきリーダー役を20代後半~30代の社員が担わざるを得ない。
- 40代以上が中心となるマネージャーとリーダーとの間に年齢・経験の差が生じており、この構造が権限移譲を困難にしていた要因の一つでもある。
- 「スーパーマン」のような能力の高いマネージャーほど、業務進捗への不安やリーダーを助けたいという思いから、自ら業務を抱え込み、階層を越えて指示を出していた。
- 質問や確認がマネージャーに集中し、それが若手の成長実感や挑戦意欲の低下を引き起こしていた。
- マネージャーには、下に任せることを覚えてほしい。
- 「スーパーマン」はいらない。
- それぞれが自身の役割を果たすことでチームが回っていく状態を目指したい。
- HTMを選んだ理由は、もともと毎朝会議を実施していたので、現場の理解を得やすいと考えたから。
3.HTM導入の中断と再挑戦
- 参加予定チームのマネージャーから「今は忙しくて無理」「なんのためにするのか」との声があがり、中断。
- HTMに取り組む趣旨やチーム選びについて、現場と運営側、運営メンバー間でしっかり合意・共有できていなかったことが原因。
- Hyper-collaboration主催のイベントに参加し、他社からアドバイスをもらって再挑戦。
- 当初はチーム選びにおいて、運営側から見て課題感のあるチームを指名で選んでいた。
- 「新しいことへの挑戦意欲のあるマネージャー」や「新任マネージャー」のチームから始めると上手くいく、とのアドバイスをもとに、チームを選び直し。
- 新たに選んだのは、「新任のプロジェクトマネージャーのチーム」と「すでに朝会がうまく回っているプロジェクトチーム」。
4.HTM導入に伴う体制の変化
- トップダウンで降りてきたプロジェクト計画書の進捗を確認するだけでなく、メンバー全員でゴールを設定し、その達成に向けてみんなでタスクを管理・共有していくようにした。
- オンラインのタスクボードを活用したメンバー全員の業務進捗やタスクの見える化。
- 2階層の朝会(HTMの基本の型)による役割・責任の明確化。
- プロジェクトチーム内でメンバーを機能ごとのチームに分け、各チームのリーダーに入社3~4年年目の社員を抜擢。これにより、チーム内に階層が生まれ、若手がマネージャーとメンバーの間に入ってチームマネジメントを学び、実践していけるようにした。
5.チームに見られた変化
- プラクティスに入って3週目くらいから、「チームのあり方が変わった」「1週間の動きが整理できた」「相談しやすくなった」といった肯定的な声があがってきた。
- マネージャーからは、「メンバーが積極的に提案してくれるようになった」との声。
- マネージャーの多くは組織の育成課題や自分の立ち位置を自覚している。頭では「変えたい」「変えなければ」と思っている。ただ、「なかなか変えられない」状況だった。
- マネージャーには、プロジェクトに対する責任と、リーダーやメンバーに任せることへの不安があった。
- HTMでタスクを言語化し、階層化によって役割が明確になったことで、マネージャーがチームを少し離れてみることができるようになった。
6.EQリフレクションシート
- 感情知能を活用したフレームワーク
- タスクのふり返りの中に感情体験を加える。業務を介した相互理解や共感を深める働きがある。
- 各人が今週行ったことを付箋に書き出し、それを4象限のマトリックスにマッピングし、各メンバーの感情を見える化。4象限のマトリックスは、「快/不快」「強/弱」で表される。
- Miroというオンラインツール上で行う。
- 「どんな気持ちでその仕事に取り組んだのか」「どういったことに不安を感じたのか」といった個人の感情も含めてふり返り、次の週の計画やタスク割を見直していく。
おわりに
今回は、『企業と人材』2025年8月号より、HTMを導入したビジネスエンジニアリング株式会社の取り組みをまとめました。
本記事を通して印象的だったのは、「スーパーマンのようなマネージャーがいることで、かえって組織の成長が止まってしまう」という構造です。
任せたいと思いながらも任せきれない、メンバーもまた遠慮してしまう。こうした関係性は、多くの現場で見られるのではないでしょうか。
HTMの実践は、特別な手法というよりも、役割を明確にし、対話とふり返りを通じてチームの関係性を整えていく取り組みの積み重ねだと感じました。
私自身が関わるOJTや1on1の現場でも、「任せること」と「関係性をつくること」は切り離せないテーマです。
個人の頑張りに依存するのではなく、チームとして機能する状態をどうつくるか。
今回の事例は、そのヒントを多く含んでいると感じました。
ところで、私が『企業と人材』を読むきっかけをいただいたのは、私がパートナー講師を務める株式会社ラーンウェルの関根雅泰さんが、2024年度の連載「研修の価値を高める これからの研修評価」を担当されていたからです。
研修評価については現在、研修講師をしながら理論と実践の両輪を回しているところです。
今後も、研修評価に関する記事は積極的に取り上げていきますが、それ以外にも、私自身が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。
