こんにちは、研修評価研究所 研究員の楠田理恵です。
いつも『企業と人材』レポートをご覧いただき、ありがとうございます!
今回も、キャリアコンサルタントと研修講師の視点から、「現場の今」に刺さる記事をご紹介していきます。
前回は『企業と人材』2025年11月号より、「越境学習」をテーマにコミュニティ活動を続けている静岡県浜松市の「ハマエツ」の取り組みをまとめました。
今回は『企業と人材』2025年11月号より、社員のキャリア自律支援に関する記事を取り上げます。
なお、2025年11月号の特集テーマは「キャリア支援」となっており、誌面ではキヤノンマーケティングジャパン、マイナビ、オリンパスの3社によるキャリア支援事例も紹介されています。
人的資本経営への関心が高まる中で、「人の成長」を企業価値向上につなげるために、社員一人ひとりのキャリア自律をどう支援するかが重要なテーマになっていることが伺えます。
記事タイトル
社員のキャリア自律醸成に向けた「企業視点」と「個人視点」の統合
(ベネッセコーポレーション ベネッセ教育総合研究所 佐藤徳紀・岩田央子)
■記事の概要
「キャリア自律」という言葉を耳にする機会が増えている。
しかし実際には、
- eラーニングを導入しても受講率が上がらない
- 社内公募制度を作っても応募が少ない
- 副業制度を整えても利用されない
といった課題を抱える企業も少なくない。
本記事では、その背景にある「個人の行動変容プロセス」に注目しながら、キャリア自律を「制度導入」ではなく、「段階的な浸透」として捉える重要性が解説されている。
1.キャリア自律には5つの段階がある
(1)キャリア自律に向けた5つの段階
I. 無関心期:キャリアへの関心や危機感がほとんどない
II. 関心期 :キャリアへの興味が芽生えて情報収集を始める
III.準備期 :自分なりのビジョンを描き、行動しようとする
IV. 実行期 :キャリアプランを実際に行動に移していく
V. 維持期 :達成した取り組みを定着させ、さらに成長へとつなげる
※習慣化や禁煙支援などでも使われる「行動変容モデル」を参考にしている。
(2)5つの段階における課題
I. 無関心期:情報不足や受け身の姿勢から抜け出せない
II. 関心期 :不安や迷いが強く、行動につながらない
III.準備期 :先延ばしや制度・仕組みの未活用で行動が停滞しやすい
IV. 実行期 :習慣化や成果の見える化が不十分だと続かない
V. 維持期 :個人と組織の方向性が一致していないと、取り組みが長続きしない
(3)5つの段階に合わせた施策
I. 無関心期:1on1や目標面談などをキャリア対話に向けて再設計する
II. 関心期 : (同上)
III.準備期 :業務内学習枠・受講補助・eラーニングなどの環境を整備する
IV. 実行期 :社内公募や手上げ制の短期プロジェクトを設置する
V. 維持期 :段階に応じた支援の循環を切らさず、制度と職場の支援運用をつなぐ
(4)5つの段階に合わせた施策のねらい
I. 無関心期:社員の価値観・強みの棚卸しを行い、自己効力感を高める
II. 関心期 : (同上)
III.準備期 :学びと社内公募・兼務(越境)への導線を一本化する
IV. 実行期 :「学んだことをどこで使ったか」を本人・上司・受け入れ側で共有する
V. 維持期 :個人の意志が具体的な機会に接続され、キャリア自律が維持される
(5)ポイントは「無関心期」と「関心期」
- キャリア自律を支援する施策を導入しても、「eラーニングを導入しても受講率が伸びない」「社内公募に応募が集まらない」「副業制度を設けても利用者が少ない」といった活性化の課題がある。これは、施策そのものに問題があるのではなく…。
- いきなり「学べ」「挑戦しろ」と言われても、人は動けない。まずは、「このままでいいのだろうか」「自分はどうありたいのだろうか」という「自分事化」が起きることが重要であり、その前段階を飛ばして制度だけ導入しても、行動にはつながりにくい。
- 「無関心期」「関心期」の意識変化がポイントとなる。
2.キャリア自律における「個人視点」と「企業視点」
(1)キャリア自律における「個人視点」
I. 無関心期:キャリアの情報不足・認識不足、危機感の欠如・無関心、受動的・依存状態
II. 関心期 :不安・危機感・混乱、興味の芽生え、方向性・判断基準の曖昧さ、相談先の模索
III.準備期 :キャリアビジョン・理想像の具体化、焦りと行動開始、学び・挑戦
IV. 実行期 :年次のふり返り、実行におけるPDCA、学習・挑戦の継続、成果実感や達成感の不足
V. 維持期 :成長・成果の実感、周りからの評価が連動、環境・キャリアへの柔軟性・適応力、個人のWILLと会社の方向性の一致
(2)キャリア自律における「企業視点」
I. 無関心期:キャリア支援の優先度が低い、戦略との連携不足、管理職が業務優先
II. 関心期 :社員の反応が不明、施策の効果が不明、断片的な施策が点在、慣例的な施策の実施
III.準備期 :参加が一部の層に偏る、導入ツールや制度が活用不足、ツールや制度が効果不足
IV. 実行期 :年次でのキャリア施策計画と実行、実践の場の提供拡大、施策の効果検証と改善
V. 維持期 :キャリア自律施策が事業戦略と連動、MBOとの紐づけ、制度と組織文化の融合
3.「個人視点」と「企業視点」の統合
- キャリア自律は、個人任せでも制度任せでも進まない。
- キャリア自律の推進には、「個人視点」と「企業視点」の統合が求められる。
- ベネッセは、「スキル」を共通言語にした「キャリア自律サイクル」を提案。
- キャリア自律サイクル:「スキル可視化」→「個別支援」→「学習」のサイクルを回す。
- 「スキル」を軸に施策を「点」ではなく「線」でつなぐ導線を整え、個人視点と企業視点をつなぐ。
おわりに
今回は、『企業と人材』2025年11月号より、キャリア自律を「行動変容」の視点から整理した記事をまとめました。
キャリア自律というと、「主体的に学ぶ」「自分でキャリアを切り拓く」といった言葉が先行しがちです。
しかし実際には、人が行動を変えるには段階があり、その段階に応じた支援や対話、安心感が必要であることを、改めて感じました。
特に印象的だったのは、理想的な施策があったとしても、人はすぐには動けないという視点です。
まずは、「このままでいいのだろうか」「自分はどうありたいのだろうか」と立ち止まって考えられること。つまり、「自分事化」が起きることこそが、キャリア自律の出発点になるのだと思います。
これは、キャリア自律支援だけでなく、新入社員育成や日常対話にも通じる話だと感じました。
明日からの実践としては、
- 相手が今どの段階にいるのかを意識して関わる
- 制度や正論を押し付けるのではなく、「自分事化」を支援する
- 小さな行動変化や挑戦を一緒にふり返る
そんな関わりを大切にしていきたいと思います。
みなさまにとって、何か一つでも参考になっていれば幸いです。
今後も、私が「いいな」と思った記事を、私なりの視点でご紹介してまいります。
次回もどうぞお楽しみに。
