一冊一会(4)

読書記録
  • 読書会主催者:鵜飼柔美さん(桜下塾主宰/㈱生き方はたらき方ラボラトリー代表/1級キャリアコンサルティング技能士)
  • 課題本:『心理カウンセリング熟練へのロードマップ:脳科学と2つの統合モデルで越える7つの壁』(杉山崇 著/誠信書房/2025)
  • 読書メモ:第3章

出会ったことば

第3章 傾聴という壁:「受容・共感・自己一致」より「存在感」を

  • 初学者であっても直感的に「人の話を自然に聴ける」人もいるが、「同じ話をグルグル聴くだけ」に陥りやすい。
  • カール・ロジャーズが強調した「受容・共感・自己一致」も傾聴の本質ではない。
  • 受容的態度も共感的理解も自己一致も、「母性的風土」をクライエントに提供する手段の一つにすぎない。
  • 「傾聴」の本質は「存在感」
  • 後期ロジャーズは、本当に重要なことはこの3項ではないと考えていた。
  • ボールドウィン(2000)によると、「クライエントに対してカウンセラーが存在すること」が本当に重要なことだと考えていた。
  • 後期ロジャーズについての考察は、1950年代の彼自身の活動を否定しているのではない。傾聴の3条件が心理カウンセリングの重要なファクターになりえる。このことは国際的なディスカッションでも繰り返し支持されている。
  • 後期ロジャーズがこれまでの自身の活動を否定・修正するかのような考察を公表した理由の一つは、3項をカウンセラーが「行う」ことを意識しすぎると、自分自身がクライエントに与えている存在感に配慮できなくなることがあるから。
  • 人の意識の容量は有限。
  • ワーキングメモリには厳密な容量制限がある。余計な刺激が存在しない実験室では「7±2」、多くの刺激が飛び交う日常生活では「4±1」。
  • 「共感しようとすればするほど共感できない」というパラドックス
  • カウンセリングに関係するのはデフォルトモードネットワーク(共感・傾聴の脳)とタスクポジティブネットワーク(助言・提案/タスク遂行脳)。どちらかがアクティブになると、もう一方は働かなくなるという相互抑制の関係にある。
  • 「カウンセラーが成すべきこと」である「受容・共感・自己一致」ができているかどうかを気にかけていると、タスクポジティブネットワークが「タスク(成すべきこと)」を意識させるので、共感脳であるデフォルトモードネットワーク働きにくくなる。
  • 私たちはどのような存在感をもつべきか。ボールドウィン(2000)によると、クライエントが安心して考えられる「心理的風土」を提供できる存在感、と表現されている。
  • カウンセリングでは母性と父性のバランスが重要とされている(河合,1994)。関係構築フェーズでは、母性的な存在感がより重要であると言える。父性は、現実検討以降のフェーズで必要となるが、「柔らかい父性」くらいを心がけたほうがいい。
  • 「私に大切にされると、クライエントは自分を大切に考えるようになる」(映像教材『グロリアと3人のセラピスト(1965公開)』の中でロジャーズが語った言葉の邦訳)。
  • 筆者は上記のロジャーズの言葉の科学的エビデンスを求め、母性的風土を被受容感と定義して、実証研究を行った(杉山,2002他)。一連の研究の結果、被受容感は内的統制感、肯定的な気分、自尊心に影響することが示唆された。
  • 被受容感は人の気分を良い方向に導くため、気分一致効果によって、被受容感が高まることでクライエントの思考は肯定的で前向き、そして建設的に変わると考えられる。言い換えれば、母性的風土の中で、多くのクライエントが主体的に考え、気づく力(現実検討力)を発揮することが期待できる。
  • クライエントの「大切にされている」「相談して良かった!」という実感に影響する、話の聞き方の重要なファクターは、「注目と身近さ」「承認」の姿勢。反対に、「相談するんじゃなかった…」に関与するファクターは、「感情の汲み取り」がないこと。
  • 「注目と身近さ」:クライエントが見ている心のシアターを一緒に見ようという姿勢(共同注視)。
  • 「承認」:良い悪いの判断なしに受容してくれるという姿勢。なお、「注目と身近さ」と「承認」は中程度の関連が示唆されているので、両者の態度は相互に支え合っていることが示唆される。つまり、どちらかでも欠けると、どちらも体感してもらえない。
  • 「感情の汲み取り」:クライエントの言葉尻にとらわれるのではなく、言葉の背景にある「気持ち」を理解しようと努める姿勢。日本語でいう「気持ち」は、「物事の解釈(認知、自動思考)」とそれに伴う「感情」をかけ合わせたものを表す。
  • 「クライエントに私たちはどう映るべきなのだろうか」という視点から、日々の相談活動の中で自己チェックを行っていく。
  • クライエントの実感ベースで、「共感の質」は次の4つ、「認知的共感」「愛情的共感」「共有的共感」「養育的共感」に分類できる(バチェラー,1988)。論文の中でバチェラーは、共感によって適切な存在感が提供されると、クライエントの良い意味での自己愛が満たされ、クライエントの苦痛が軽減され、さらにクライエントが必要としている何らかの治療効果も見られるようになると示唆している。
  • クライエントが必要とする存在感(例えば、養育的な存在感)をカウンセラーが受け入れていなければ、そのように感じさせるリアクションも制限される。すると、クライエントが安心して主体性を発揮することができず、結果的に何も進まない「同じような話をくり返す」ループにカウンセリングがはまり込む。
  • クライエントが必要とする存在感(例えば、養育的な存在感)をカウンセラーが提供できると、何らかの変化を起こすことへの動機づけが育つ(変化のステージ:熟慮から変化へ)。
  • カウンセラーがどのような存在感を提供すればよいのかわかったとしても、担当者であるカウンセラーがやりきれない場合もある。言い換えれば、クライエントが必要とする存在感を受け止めきれない、あるいはカウンセラーへの期待を受容できないような場合は、クライエントにとって役立つ存在感を提供することが難しくなる。
  • カウンセラーは、必ずしもクライエントが期待している存在感を提供できなくても、変化のステージを促進させる存在感を考えて、自分のあり方を顧みると良い。カウンセラーが受容可能で、クライエントに役立ちそうな存在感を考えてみる。
  • クライエントという存在がカウンセラーの何らかの葛藤を刺激するために、カウンセラーが提供できる存在感が制限されることもある。このような場合、カウンセリングを中断したり、スーパーヴィジョンを受けながら担当したり、担当者を変えるなどの措置を取ることがある。
  • 存在感の限界はカウンセリングの限界。

本との対話

  • 「人の意識の容量は有限」という言葉にどこか安心した。「自分はこの仕事向いてないのかな」と思うことがあるけど、人間としての限界や私個体としての限界がある中で、できることを見極めていきたい(自己理解)。
  • 「共感の質」の4分類は新しい視点であり、「カウンセリングでこれをやっていはいけない」と自分を縛っていた思い込みから自由になれた。
  • ドラマ『さよならノワール』の小池栄子さんが演じている役柄は、まさに「共感の質」を使い分けていると思う。

『心理カウンセリング熟練へのロードマップ:脳科学と2つの統合モデルで越える7つの壁』杉山崇(誠信書房)
読書会(鵜飼柔美さん主催)課題本

読書記録
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楠田 理恵くすだ りえ

リフェクション 代表

埼玉県生まれ。
明治大学法学部卒。大学卒業後、専門商社で16年間事務職に従事。最初の10年は、総務部にて人事、労務、採用、育成、庶務等、幅広く担当。この頃、「社員の相談窓口的な存在」「新入社員のフォロー役」という立ち位置を確立していった。
出産・育休を経て復帰後は、短時間勤務で働くいわゆる「時短ワーママ」を経験。また、2人目の育休から復帰後は、働きながら心理学を学び直し、キャリアコンサルタント(国家資格)を取得。

その後、子供2人の成長に合わせた「働き方改革」を段階的に進め、2021年に起業。
現在は、フリーランスのキャリアコンサルタントとして、企業研修、若手社員の1on1面談を行っている。研修後や面談後の細やかなフォローが強み。特に若手社員の「お母さん的存在」として、精神面のフォロー役を担っている。
家族:夫、長女、長男

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