- 読書会主催者:鵜飼柔美さん(桜下塾主宰/㈱生き方はたらき方ラボラトリー代表/1級キャリアコンサルティング技能士)
- 課題本:『心理カウンセリング熟練へのロードマップ:脳科学と2つの統合モデルで越える7つの壁』(杉山崇 著/誠信書房/2025)
- 読書メモ:第1・2章
読書メモ
第1章 カウンセリングのロードマップ,変化のステージモデルと3階層モデル
- 変化のステージモデル
・カウンセリングの3階層(3フェーズ)モデルと変化のステージモデル
step0:関係構築
step1:現実検討→現実受容
step2:問題解決(何かを変える試み)
- あらゆるカウンセリングの出発点
・最も基本的であらゆるカウンセリングの出発点ともいえる階層が、「step0:関係構築フェーズ」
・関係構築は、クライエントに見えている世界(心のシアター)を教えていただくことから始まる
・そのうえで、カウンセラーとクライエントの共同作業のヴィジョンの共有を目指す
・ここまで到達したところで、次の「step1:現実検討→現実受容フェーズ」の階層に移る
・step1のフェーズで、現実のポジティブな側面が見つかって現実受容が進むこともある
・step0からstep1の現実検討フェーズに進むプロセスで、私たちはクライエントに違和感を与えがち
・質問やコメントがクライエントを追い詰めるように聞こえて、中断につながることもある
・現実検討フェーズに進み、クライエントの熟慮(自覚)を促すことは、クライエントにとって欠かせないプロセス
●第2章 関係構築という壁:クライエントに拒絶されないための覚書
①エライザ(ELIZA)効果
- パターンに沿ってリアクションしているだけでも、関係ができたと感じてくれるクライエントがいることを示唆
- ELIZAと対話した人の多くは、あたかもELIZAが人格を持ち、自分に興味を持っているように体験していた
- 人が勝手に人格を見出し、勝手に「関係」を実感していた
②関係構築のフェーズで重要なラポール醸成
- ラポールの形成は、関係構築の一つの到達点とも言える
- ラポールの語源は、「橋をかける」というニュアンスのフランス語
- 「カウンセラーとクライエントの間に心の橋がかかる」という比喩(メタファー)
③共同注視
- 共同注視:クライエントの悩み(X)に、クライエント(A)とカウンセラー(B)が同じ気持ちを向けること
- 共同注視=悩み事と目標を共有する協働関係=アライアンス(同盟)
- 共同作業のヴィジョンの共有
④心のシアター
- step0の最も下の階層=カウンセラーが最初に試みる事柄が、「心のシアター(現象学的世界)の理解」
- クライエントが見ている世界は、現象学では「現象学的世界」と呼ばれる
- 「クライエントの空想」と表現することもある
- いずれも「脳内で描かれた世界」
⑤クライエントに拒絶されがちな悪い例
- クライエントに「強引」「無関心」「説得意図」を感じさせる
- 人はよく知らない人に対しては本能的に警戒し、脳内では警戒信号が発信されている
- 「冷たい」「温かい」が初対面の人への印象に強く影響するポイント
- 人間関係はまず自分を傷つけない、拒絶しない、自分にとって安全な人かどうか確認することから始まる
- 初対面では、クライエントは私たちを警戒している可能性を考慮する
- クライエントの多くは困って来談しているので、傷つきやすくなっていることが多い
⑥するべき3項目
- 「穏やかで謙虚」に、「注目」し、「教えていただく」という姿勢を持つ
- クライエントに拒絶されるパターンの一つ「カウンセラーが批評的になっている」
- クライエントが今困っていること(X)に対して評価的な視線を向けると、ほとんどの場合で「A」と「B」の心の橋は消える
- 心の橋が消えやすいとき:無断欠勤、遅刻の繰り返し、ついついやってしまった、パパ活、児童生徒の妊娠など
- ある価値観によっては批判されるような悩みであっても、それらはクライエントという存在の断片である
⑦「評価的に見える」だけでも拒絶される
- 「自分を非難する大人」のイメージを投影され、転移が起きることで心のシアターから拒絶されることもある
- カウンセラーは、批評的な存在と見られかねない現実を受け入れることが必要
- そのことを前提に、クライエントにとって安全な存在であることを伝え、できることは何でもするという姿勢が必要
- 直接的な言葉かけ、表情や態度、啓発活動など
- 問題について話したくなささそうなら、無理に話題にしない
- もっと話しやすいことから心の橋の構築を試みる
⑧クライエントの来談が自発的な来談ではない場合
- 天気や時事的な話題など、気楽に受け答えできる「X」を使ってアイスブレイク
- 「A」が話し好きで自分のことをいろいろお話ししてくれるようなら、その「X」に興味を持っている姿勢を表現して、良いABXをしばらくお互いに楽しむ
- ただし、カウンセリングは、「楽しい会話」だけで終われないこともある
- 回数や期間の制限の関係で、じわじわと「X」を「問題にされていること」に向けていかざるを得ない
- 「X」そのものではなく、「AがXに向けている気持ち」のほうに興味がある態度をとる
⑨批評の例外
- 時には「叱ってほしい」クライエントもいる
- 強固なラポール/アライアンスが築かれている場合であれば、批評的な姿勢が逆に尊重になる場合もある
- クライエントに二つの矛盾する思いがあるとき、カウンセラーは、どちらの思いも大切にする気持であることが伝わる対応を試みる
- クライエントの中に存在する「ときに矛盾する」複数の感性や価値観のすべてを、尊重する姿勢が伝わることが大事
- 一見すると批評的な対応であっても、非難ではなく「温かい批評」として伝わる場合もある
- 決してやってはいけないことは、カウンセラー自身または一般的な良識とされるような価値観や感性でリアクションすること
⑩「ペルソナ」という形の拒否
- ペルソナも社会適応機能の一つではあるが、本来の「その人らしさ」を隠すものでもある
- ペルソナが強く働いていると、ラポール/アライアンスの醸成の障害になる場合もある
- キャリアコンサルティングや産業領域では特に、勤労者やビジネスマンとしてのペルソナで来談する
- 司法領域の処遇としてのカウンセリングでは、「触法行為をする人ではない」というペルソナで来談する人もいる
- 医療領域では、「患者役割を義務づけられた人としてのペルソナ」(あるいは患者役割に納得していない状態)で来談
- 教育領域では、児童生徒のペルソナ、親としてのペルソナなど
⑪「ペルソナ」を巡るABXの罠
- ペルソナは社会適応の機能でもあるので、多くの場合で協調性を発揮する
- カウンセラー(B)には「A」が相対的に協力的で落ち着いて見えてしまう
- 一見すると良いABXができあがり、関係構築ができていると思ってしまう場合もある
- 「ペルソナ」で対応しているということは、クライエントはカウンセラーに「心を許していない」ということ
- 司法面談では、触法行為への意志が明確なときほど、「司法に協力的な良いクライエント」というペルソナを見せる
⑫ペルソナへの注目
- クライエントがペルソナを見せようとするゲームに付き合うことも、まったく無意味というわけではない
- ペルソナで自分を隠さないと来談できないクライエントもいる
- カウンセラーがペルソナに付き合う中で、じわじわとカウンセラーが安心な存在だと認識してくれるかもしれない
- しかし、心の橋が成立していると油断すると中断を招く場合もある
- 司法面談では、「A」が本心を隠す目的でペルソナを見せ続ける場合もある
- 産業領域では、上司や部下として来談した場合、ペルソナを巡るコミュニケーションをしているだけになる
- 表層的な話だけで、「カウンセリングに来談した」というアリバイが貯まるだけ
- 心のシアターを巡る心の橋が成立していないので、クライエントは変化のステージを進むことはない
- 教育領域では、親が学校関係者や親族に責められないために来談、あるいは教師が校長や学年主任、父兄に責められないために来談している場合もある
- クライエントがカウンセラーに見せているものがペルソナか、クライエントの本当の心の世界か、常に問い続けるのが熟練のカウンセラーである
読後メモ
- 第2章を呼んだ後、これからは「関係構築ができている」と簡単に言えないと思った。
- 「心の橋」を意識したい。
- ABXの図を思い描きながら共同注視の実践。
- 相談者の「心のシアター」が少しでも見えるように、見せてもらえるような関係構築。
- 最初は警戒されていると思って丁寧に関わる、という考え方は面談に限らず参考になる。
- 批評や評価は無意識にやっていることがあるから注意したい。一見プラスな発言に見えるものも危ない。
- 本題(問題・悩み)に触れる局面での杉山先生の具体的な応答例が大変参考になった。
- 悩みは相談者の「断片」という表現に温かみを感じた。大切にそっと触れようと意識できる気がする。
- これまで「相手はペルソナをつけている」と意識したことはなかった。「役割」と言い換えたら、誰しもが複数持っているものだと思う。
- 全体を通して、杉山先生の具体的な応答例が参考になった。雑談のような自然さでありながら、熟慮され、選び抜かれた言葉。そして当然ながらワンパターンではない。
『心理カウンセリング熟練へのロードマップ:脳科学と2つの統合モデルで越える7つの壁』杉山崇(誠信書房)
読書会(鵜飼柔美さん主催)課題本
