- イベント:認定心理士の会関東支部×EMREC公開シンポジウム
- タイトル:「採用における『見極め』と『惹きつけ』の心理学」
- パネリスト:
・岩本 慧悟氏(神戸大学大学院経営学研究科エントリー・マネジメント研究教育センター、株式会社ZENKIGEN)
・佐藤 映氏(臨床心理士、公認心理師、株式会社リーディングマーク) - 開催日時:2026年7月25日(土) 14:00〜16:30
- 会場:大正大学(豊島区西巣鴨)
岩本先生のお話メモ
面接での「見極め」
- 面接回数が重なるほど疲労し、応募者の話を深掘りしなくなっていく。裁判官でも同じ現象が起きている(Danziger et al., 2011)(連続判断による「制御資源」の消耗、見極め精度低下)。面接の前に1分でも休憩をはさむようにする。
- 「構造化面接」によって、入社後の活躍度を予測することができる。構造化レベル3(質問がある程度決まっており、仕事内容に合わせた具体的な質問と評価軸が決まっている)以上の構造化が、入社後パフォーマンスをよりよく予測する(Huffcutt & Arthur, 1994)。
- 評価のための「語彙」を磨く。例:「コミュニケーション能力」とは…相手に好印象を与えらえれること?相手の意図を推測できること?テンポよくラリーができること?
- 「高さ」を見るのか?「欠如」を見るのか?という観点も揃えておく。例:上手くいかない時に目指すべき目標を調整できる…「柔軟性がずば抜けて高い」ことが重要?「柔軟性が欠如していない」ことが重要?それによって質問の仕方が変わる。
- 制御焦点理論(Higgins, 1997)
・促進焦点:「理想や成長の実現」に向けて、プラスの多さに着目するモード(面接なら、ポジティブチェックのモード)
・予防焦点:「義務や安全の確保」に向けて、マイナスの回避に着目するモード(面接なら、ネガティブチェックのモード)
※認知的な観点からも、両方のモードを同時に走らせるのはかなり難しい - 1回30分の面接で評価できる観点は2~3個が限界。1回の面接で欲張り過ぎず、選考フロー全体で見るべき評価観点を設定する。
- 応募者が語る経験談が、こちらが見たい評価観点を評価するのに適しているか?という視点も大切。ポジティブな評価観点であれば、こちらが評価したいことが応募者に伝わっても問題ないことが多いので、直接聞いてしまうのもあり。
面接での「惹きつけ」
- 日本企業の採用活動は苦しい状況(採用目標未達、内定辞退)にある(リクルート就職未来研究所, 2024)。「惹きつけ」の戦略的な設計(内定承諾の決め手、候補者体験)が求められる(パーソル総合研究所, 2024)。
- 「採用に関する研究の多くはスクリーニングと選抜に焦点を当てており、応募者の組織への惹きつけにはほとんど注意が払われていない」:Chapman & Mayers(2015)
- 候補者は「何を言われたか」だけでなく、それを手がかりに「この会社は自分をどう扱うか」を推論している。採用プロセスにおける接点の中で、入社意思を更新し続けている。
- 応募者の惹きつけに関する研究知見として、面接官のコミュニケーション(Spence, 1973; Rynes, 1991)、リクルーターの印象(Rynes et al., 1991)、面接官のプレイフルさ(Kohn & Dipboye, 1998)、面接官が取り上げる話題(林, 2009)等がある。指針となる統合的な枠組みとしては、自己決定理論(Deci & Ryan, 1985 ほか)、特に基本心理欲求理論(Ryan & Deci, 2017)が手がかりとなる。
- 3つの基本的欲求(関係性欲求・有能性欲求・自律性欲求)が満たされる環境では、内発的に動機づけられ、高いパフォーマンスと心理的ウェルビーイングを経験する。逆に阻害される環境では、動機づけが低下し、不適応的な結果が生じやすくなる。
- 3つの基本欲求を活かした「候補者体験」の設計。1次
- 選考~最終選考だけでなく、説明会・人事面談・スカウト・内定者イベント・内定式まで含めた接点全体に、3つの欲求を満たす施策を配置する。
佐藤先生メモ
- 「人事」のための心理学(日本実業出版社/2025)著者
- 心理学と臨床心理学の違い
- 参考書籍:臨床の知とは何か (中村雄二郎 著/岩波新書/1992)
- 「見きわめ」では、適格性と適合性は分けて考える
- 「見きわめ」のため、面接中に意識すること:自己モニタリング・類似性バイアス・確証バイアス
- 「候補者が語ったこと」と「それを聴いて面接官が感じたこと」は分ける
- 情緒に触れる問いは関係が深まってから
- 成果よりも習慣に注目する。習慣を知るために履歴を聴く。
- 「惹きつけ」では、候補者に「自分を出せた」と思ってもらうことも大切。
- RJP(Realistic Job Preview)には、ワクチン効果、自己選抜効果(セルフスクリーニング効果)、「コミットメント効果」がある。
- 「自責」「他責」と感じるポイントは会社によって違う。もし面接で「他責」を見きわめたいのであれば、その会社で「他責」になるケースを洗い出し、面接の観点として組み込む。
- 客観的指標へのfitよりも、本人が「この会社に合っている」と感じられることの方が内定承諾率を上げる。
参加してみての所感
- 岩本先生と佐藤先生のそれぞれのパートだけでなく、質疑応答でのお二人の対話を含め、全ての内容について「聴けて良かった」と感じました。参加してよかったです。
- 岩本先生が推す、「構造化面接」が入社後の活躍度を予測できるというお話は、もしまだ知らない企業や人事の方がいらっしゃれば共有させていただきたいなと思います。
- 岩本先生の、評価のための「語彙を磨く」というお話や、佐藤先生の自責・他責の「見きわめ」のお話は、哲学対話を彷彿とさせました。哲学対話を推し中なので、勝手に嬉しい共通点。
- 岩本先生のスライドに散布図や回帰分析の図が多用されていて、参考になりました。(データ分析勉強中)
- 佐藤先生の心理学と臨床心理学のお話が分かりやすかったです。腹落ちしました。
- 佐藤先生の「見きわめ」の留意点は、採用面接に限らず、カウンセリングや1on1、子育て…等、日々のコミュニケーションに使える!とワクワクしてきました。早速使わせていただきます!
- お二人のコンビ、本当によかったです。またどこかで見たいです。
ふり返りMTG
イベントの後は、池袋に移動して一緒に参加したお友達とふり返りMTG。
今回のイベントは、キャリアコンサルタントのお友達、いたくらりかさんにお誘いいただきました。りかさんは、現在は大学生支援を中心に活動中の実務経験豊富なキャリアコンサルタントです。今回のイベントだけでなく、大人の学び直しに関する情報をたくさん教えていただき、今後の活動にも影響してきそうです。楽しくて有意義な時間をありがとうございました。

りかさんをずっとお連れしたかったお店でようやく乾杯が叶いました。

また行きましょう!
