- 読書会議主催者:Kazumaさん(経営者/起業家)
- 課題本:「言いたくても言えない」はなぜ起こるのか?(林博之 著/JMAM/2026)
- 読書メモ:第5章より
読書メモ
瞬発力とは
- 「瞬発力がある人」の一般的なイメージ…すぐに気の利いた発言ができる。頭の回転が速い。とっさに正解を言える。
- 本書で扱う「瞬発力」…質問に対してすぐに結論を言えなくても、「少し確認させてください」と返せたり、意見がまとまっていなくても、「今の話、ここが気になりました」と口に出せる。違和感を覚えたときに、無言で飲み込まず、何らかの反応を示せる。
瞬発力はスキル
- 場に慣れている人や経験が豊富な人ほど反応が早く見えることがあるが、それは反応の材料がすでに体の中に用意されている側面が大きいから。
- たとえるなら、引き出しが多いかどうかというよりも、引き出しの中身が整頓されていて、状況に合わせてすぐ取り出せる。そして取り出した素材を、その場の相手や流れに合わせて組み替えられる。しかもそれは、用意してきたルーティンをそのまま出すことではなく、ルーティンが効かない状況で、その場に合う形に再編集していく力である。
- 瞬発力とは、この取り出しと組み替えが滑らかに起きる状態だといえる。
- この意味で、瞬発力はスキルである。
- ただし、スキルとしての瞬発力は、それ単体で成立しているわけではない。
- どれだけ引き出しがあっても、反応が止まる構造の中では使われずに眠ってしまう。
瞬発力を構造として捉える
- 瞬発力を「鍛える」よりも先に、瞬発力を出せる構造をつくる。
- ここで言う「構造」は、必ずしも外側の環境だけを指しているわけではない。
- 場や関係性の影響は大きいが、同時に、身体がどのように非言語メッセージを意味づけているか、という内側の構造もまた、瞬発力を左右する。
- 相手の沈黙や表情を、即座に「否定」や「失敗」と確定させてしまうと、構造は一気に「止まる前提」に傾く。
- 「まだ判断しなくていい」「ここで終わりとは限らない」と意味づけを保留できれば、同じ場でも反応は続きやすくなる。
- Yes,Andや「構造としての鈍感さ」は、この内側の構造に働きかける方法。
- 相手が変わるのを待つのではなく、反応を止めきらないための前提を、こちら側で確保する。
- その余地があるからこそ、瞬発力はスキルとして扱える。
- インプロ(即興)が扱っているのは、まさにこの部分。
大人が瞬発力を取り戻す方法
- 賭け金を下げること。そして、小さく出すこと。
- 多くの職場で起きているのは、最初の一言に、あまりのも多くの意味が背負わされている状態(「的確でなければならない」「間違ってはいけない」「評価に耐える内容でなければならない」「空気を乱してはいけない」)。
- こうした条件が重なると、一言目は「発言」ではなく「決断」になる。身体が止まるのは当然。
- 行動科学や不安研究では、行動に伴う「賭け金」が高いほど、人は回避行動を選びやすくなることが示されている。行動経済学でも、人は得られる利益よりも失う可能性を強く避ける傾向があると指摘されている。
- 結果の重さを下げ、小さな行動から始めることで、身体の警戒は次第に緩んでいく。
- 反応性を取り戻すために必要なのは、大きな成功ではなく、賭け金を下げたまま反応を続けられたという経験。
「賭け金を下げる」とは
- 一言に「未来のすべて」を背負わせない。
- 反応性が戻ってくる人の多くは、最初から「正解」を出すのではなく、完成させずに出す。
- 反応できなくなる人は、出す前に、すべてを整えようとする。その結果、身体が「危険だ」と判断し、止まる。
- 賭け金を下げるとは、正しさを確定させず、完成度を求めすぎず、評価の重みを一旦脇に置くということ。
心理的安全性の本質
- 芸歴10年以上の芸人の「お笑いイップス」の話は、安全が先に整ったから動けたのではなく、小さな動きが排除されなかったことで、次の動きの余白が生まれたという循環を示している。
- 互いに助け合いながら、同時に競い合うという世界が成立しているのは、対人リスクを取った瞬間に、即座に排除されないという前提があるから。
- 心理的安全性とは、「優しい空気」のことではない。
- 高い基準や競争があっても、発言や挑戦が、即座に存在否定に結びつかない状態。
組織への影響
- 即興的な反応は、組織の生成性を支える重要な要素であり、個人の小さな行為が場の性質そのものを変えていく契機になる。
- こうした変化は、個人の「話し方」や「勇気」の問題にとどまらず、反応のしかたが共有されていくことで、場そのものの性質が変わっていく。
- 即興研究や組織研究の分野では、不確実で変化の激しい環境において求められるのは、あらかじめ正解を持っている人ではなく、状況に応じて反応を更新し続けられる人と関係性である、という視点が示されている。
- 「小さな反応」をその場に返せると、まずは場の空気が変わる。
- 一人が小さく反応すると、その場は「発言=高リスク」という構造から外れ始める。
- それは「発言は確定ではない」という前提がその場で初めて「見える形」になるから。
「素朴な疑問」
- 講演会や研修の質疑応答で、最初の一人が手を挙げるまでの沈黙が長く続くことがある。そこで誰か一人が素朴な質問でも口火を切ると、場の緊張が緩み、次の反応が生まれやすくなる。
- 質問が出るということは、興味をもってもらえた証拠。
- 素朴な質問は、もっと知りたいという気持ちから自然に出てくる質問。
- 素朴な質問が、次の質問の呼び水になることがある。
- 内容の正しさよりも、場に「動き」を生むことに意味がある。
消耗しにくい組織をつくる
- 組織文化は、制度よりも先に、そこで交わされる反応の型によって形づくられる。
- 反応できる大人がいる場では、違和感が早めに出たり、誤解が小さいうちに修正されたりして、「あとから問題になる」ことが減る。
- これは生産性の話でもあるが、それ以上に「消耗しにくい組織」をつくる。
- ズレを飲み込み続ける職場では、身体は常に警戒し、見えない疲労が蓄積していく。
- 小さな反応が許される場では、ズレはその都度、軽く処理される。
- その結果、無駄な緊張が減り、感情の爆発が起きにくくなり、関係性がこじれにくくなる。
- 「話せる人」を増やすのではなく、「反応できる人」を増やすことで、組織を固まりにくくする。
読後メモ
- 著者の林博之さんは、現在進行形で私の起業のメンターであり、素晴らしいファシリテーション技術を教えてくださっている方でもあります。まだ知らなかった林さんの一面が本書にはギュッと詰まっていて、驚きとともに尊敬の念が増しています。
- 林さんの人柄を知っているのでより一層そう感じるのかもしれませんが、本書からは「優しさ」を感じます。「言いたくても言えない」私たちにに対して、「努力」も「意識改革」もすすめてこないからです。
- 読書メモに残したい箇所がありすぎるので、今回は何往復もした第5章からの読書メモ。私が常々ほしいと思っている能力が「瞬発力」という言葉に凝縮されている気がしたので…。でも、読んでみて分かったのは、本書でいう「瞬発力」とは、能力的に優れている人が身につけているものではなく、「構造」であるということ。
- 講演会などの質疑応答で、「口火を切る」という話があったが、そういえば最近参加したシンポジウムでも、質問の口火を切って場の雰囲気をほぐしていた方がいたなと。あれはあの方の意図的な行動だったと思っている(実際のところは不明)。
- 「お笑いイップス」の話が強く印象に残っている。私も中二くらいからイップスかも…と思った(中二病?!)。
- 組織の生産性、さらには消耗しにくい組織づくりにまで影響を及ぼす可能性にわくわくした。
- 瞬発力は構造の問題でもあるとしている一方で、「たとえるなら、引き出しが多いかどうかというよりも、引き出しの中身が整頓されていて、状況に合わせてすぐ取り出せる。…」「瞬発力とは、この取り出しと組み替えが滑らかに起きる状態」と、スキルとしての瞬発力を言語化してくれていて、参考になる。スキルとしての瞬発力、手に入れたい!
- 瞬発力を出せる構造として、環境など外側の構造だけでなく、「身体がどのように非言語メッセージを意味づけているか」という内側の構造に触れているところが、個人的にも、キャリアコンサルタントとしてもぐっとくる。他人は変えられなくても、自分の捉え方は変えられる可能性がある。
読書会議

主催のKazumaさんが久しぶりに参加され、読書会議前半は、お互いの近況報告の場となりました。Kazumaさんの大学院の授業が始まるまでの約1時間でしたが、お話できてよかったです。
後半は、林さん、柴田さん、金井さん、Kさんとの読書会議。「言いたくても言えない」話がたくさんできたので、これって心理的安全性の高い場だったということですよね?林さん。
金井さんの素晴らしいまとめスライドも共有させていただきます。


職場や家庭で参考になる一冊だと思います。たくさんの人に届きますように。
「言いたくても言えない」はなぜ起こるのか?/林博之(JMAM)
読書会議(Kazumaさん主催)課題本
